2017/11/04

尾西鉄道の客車を作ろう!(1)-序論

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IORI工房さんが12号機関車のキットを出すらしい(と信じている)のでそれに合わせて客車を作ろう!という企画です。当初予定では冬コミで出したかったんですが、落選してしまったのでとりあえずここに書き溜めていきたいと思います。

尾西鉄道とは?

尾西鉄道は、現在の名鉄尾西線と名鉄名古屋本線の名鉄一宮-国府宮間を営業していた私設鉄道です。特に尾西線の弥富-名鉄一宮間は、現在の名鉄の路線の中で飯田線との共用区間に次いで古い路線です。

尾西鉄道の魅力は、何といっても明治~大正期に運行されていた蒸気機関車が保存・公開されていることでしょう。尾西鉄道で運行されていた蒸気機関車のうち、1号と12号の2両が明治村にて保存されています。

尾西鉄道は大正14年に当時の名古屋鉄道に営業を譲渡し解散していますが、そこに至る転機となったのが大正3年に津島線が開業したことです。尾西鉄道でもこれに合わせて、2号・3号機関車(鉄道院673号・2852号)の2両と鉄道院164・165・190・191号機関車(尾西11・12・21・22号)の4両とを交換したほか、ほとんどの客車を改造するなどして対策をしています。

今回は、この改造後の形態である大正2年~大正8年頃の客車をNゲージで作ってみたいと思います。

模型の資料について

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模型を作るためには、客車の資料が必要となります。形式図と写真はできれば欲しいところです。古典客車の形式図といえば客車略図が有名ですが、尾西鉄道の車両は国有化されていないので当然収録されていません。

ここで強い味方となるのが明治村です。「尾西鉄道車両係願届綴」という名前から明らかに強そうな資料が所蔵されています。一般には公開されていないと思われ、どうやったら閲覧できるのか想像もつきませんが、内容の一部が鉄道趣味誌から漏れ伝わってくるのでそれを参考とします。(鉄道ピクトリアルNo.372~No.373「尾西鉄道回顧」「幻の尾西鉄道」・鉄道ファンNo.427~No.429「尾西鉄道の記録」など)特に鉄道ファンNo.428「尾西鉄道の記録その2」には客車の図面が11面掲載されているので、これを全面的に参照します。

一方の写真は、上記鉄道趣味誌にも若干数が掲載されていますが、郷土出版社「保存版尾西鉄道の100年」を参照します。この中に掲載されている現役時代の客車の写真は全部で5枚、ほとんどが不鮮明な写真ですが仕方がありません。不明点は諦めてIORI工房キットを踏襲することとします。

客車について

「尾西鉄道の記録その2」によると、大正初期の尾西鉄道の客車は以下の通りです。
(★印は図面が掲載されている車両)

二等車

  • 形式甲・ろ1(明治31年月島工場製・元一二等合造車いろ1)
  • 形式乙・ろ2(明治31年日本車両製・元一二等合造車いろ2)

(※明治45年一等営業廃止に伴い一等室を二等に格下げ、改造は実施せず)

二三等合造車

  • 形式壬・ろは13(明治30年日本車両製・明治33/45年改造・元は13)★
  • 形式辰・ろは14(明治30年日本車両製・明治33/大正2年改造・元は14)★

三等車

  • 形式子・は1(明治32年月島工場製・明治45年改造)★
  • 形式寅・はへ2(明治32年月島工場製・大正元年改造・制動機付き・元は2)
  • 形式辛・は3(明治32年月島工場製・明治44年改造)
  • 形式丑・は4(明治32年月島工場製・大正元年改造)
  • 形式丁・は5(明治34年日本車両製)
  • 形式丁・は6(明治34年日本車両製)
  • 形式丑・は9(明治30年日本車両製・大正元年改造)
  • 形式丑・は10(明治30年日本車両製・大正元年改造)★
  • 形式丑・は11(明治30年日本車両製・大正元年改造)
  • 形式寅・はへ10(明治30年日本車両製・大正元/3年改造・制動機付き・元は10)
  • 形式寅・はへ11(明治30年日本車両製・大正元/3年改造・制動機付き・元は11)
  • 形式辛・は12(明治30年日本車両製・明治44年改造)★
  • 形式寅・はへ15(明治30年日本車両製・大正元/2年改造・制動機付き)
  • 形式寅・はへ16(明治30年日本車両製・大正元年改造・制動機付き)★

三等緩急車

  • 形式癸・はほ1(明治32年月島工場製・大正元/4年改造・元にほ1)★
  • 形式癸・はほ2(明治33年月島工場製・大正2年改造)★
  • 形式癸・はほ4(明治30年日本車両製・明治45年改造)★

郵便緩急車

  • 形式卯・にほ1(明治32年月島工場製・大正元年改造)
  • 形式卯・にほ3(明治30年日本車両製・大正2年改造)
  • 形式卯・にほ5(明治34年自社工場製・大正元年改造)★

機関車が5両に対して二等車4両・緩急車5両・三等車12両(うち制動機付き5両)ですから、客車5両程度の列車で運行されていたと推測できます。「尾西線の100年」に掲載されている客車の写真のうち列車全体が写っているのは1枚だけですが、その写真では4両の客車を連結していることが分かります。

これを踏まえて、今回製作する客車を以下の9両に決定しました。

  • 形式甲・ろ1(二等車)
  • 形式丙・ろは14(二三等合造車)
  • 形式子・は1(三等車)
  • 形式丁・は6(三等車)
  • 形式辛・は12(三等車)
  • 形式寅・はへ15(三等車)
  • 形式寅・はへ16(三等車)
  • 形式癸・はほ2(三等緩急車)
  • 形式卯・にほ3(郵便緩急車)

次回に続く
(尾西線担当)